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ぺーすけ
-2004-04-05 14:43:31 (ホームページ)
厨房だった頃、唐突に校長が死んだ。
むろん、どうでもいい人の身に起きた災いに違いない。
厨房どもにとってどうでもいいで済ませられなかったのは、 このおかげで、授業が早々と打ち切られるかもしれなかったからである。
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ぺーすけ
-2004-04-05 14:44:32
朝。
担任の教師からその旨を告げられた生徒たちは、色紙を配られ、 校長先生の遺族に贈るお悔やみの言葉なるものを書かせられた。
みんな、色々なことを書いた。
ぼくなどは、
『朝から気分が悪かった。登校する途中で靴の紐が切れた。果たして学校へ着いてみると、弔旗が……』 というような、見えすいたことを書いた。
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ぺーすけ
-2004-04-05 14:46:00
ヨースケというぼくより成績の悪かった生徒は、 校長先生の御霊に捧げると称し、その朝、目にした情景を題材にして詩を書いた。
『ひばりが飛んできて、ピ〜ヒョロロ〜』といった内容だった。
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ぺーすけ
-2004-04-05 14:46:59
生徒たちを教室に閉じ込め自習させたまま、職員会議は長引いていた。
厨房どもはブーブー不平を垂れ流し、教室の中は騒然たる状況だ。
「やだやだ。一日自習やらされるのかよ」
「おい、校長が死んだんだぞ。まともな中学だったら、喪に服して一週間は休学するよな」
「ケチな学校」
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ぺーすけ
-2004-04-05 14:47:57
ようやく会議が終わり、担任がうれしい結論を持ってきた。
校長先生のご逝去をみんなで悼むため、今日の授業は中止となり、 全校生徒が各自、自宅で自習をおこなうようにと発表されたのだ。
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ぺーすけ
-2004-04-05 14:49:05
みんな、歓声を上げ、狂喜した。
『ひばりがピ〜ヒョロロ〜』という哀悼詩を故人に捧げたヨースケなどは、 立っていた机の上から跳び上がってバンザイし、悦びの感情を全身で表現したほどだ。
なんで、机の上なんかに立っていたかって? そんなこと、知らないよ(笑)。
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ぺーすけ
-2004-04-05 14:49:49
校門を出ていく生徒の中で、儲けたという顔をしない者はいなかった。
だけど、素直に喜んでばかりもいられない。
ぼくのクラスの生徒は、後日、校長の葬儀に参列しなければならなくなったんだ。
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讃岐うどん
-2004-05-01 07:42:37
まっくろけのカラスが二羽、死者の家の屋根に舞い降りた。
「クワア! 今晩は。」
「クワア! 今晩は。」
インク壷を倒したような闇の中に、鋭い嘴と眼が、炯々と光っている。
「クワアァ・・・! 夜は、遺族の嘆きに満ちています。」
「明日は、ここの家の主人の葬儀でェす!」
二羽は、殆んど同時に嘴を開くと、一際甲高い鳴声を発した。
「さぞや・・・葬式饅頭が、たんと食える事でしょう!!」
二羽のカラスは、バサバサと翼を羽搏かせ、漆黒の夜闇に姿を消していった。
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讃岐うどん
-2004-05-01 07:44:28
・・・ストーリー上、意味はありません。
萩原朔太郎の『猫』の、拙いパロディでした。
一度でいいから、やってみたかったのです(汗)
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Kagami
-2004-06-03 18:25:01
ところで、校長の死因というやつをぼくは誰からも聞かされていなかった。
クラスの誰に聞いても知らないと言うし、担任に聞いても「過労死」だとか適当な説明をされるだけだった。毎朝、生徒に混じって自転車で出勤していたバイタリティに溢れるあの校長が、過労で死ぬだなんて、誰が想像できるだろう。
そのことも多少、話題に上ってはいたが、やれ通り魔による殺人事件だの、不倫関係にあった女性との軋轢で諍いの結果だの、根も葉もない噂が飛び交うばかりで、信憑性はまるでなかった。
( 続く )
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