「暗闇に潜む陰」


あたし、襲われちゃったんです。

- -2002-04-12 12:40:24
由希子は、夜道を歩いていた。
すると、何かに気がついた。

『・・・・・・何か、いる?』

暗闇の中の存在を感じたときには、もう遅かった。

その存在は、由希子に襲いかかってきたのだった。
-
ぺーすけ -2002-12-27 23:22:09 (ホームページ)
「うひょーーーっ!」
 おおっ。
 それは、それは……昔なつかしい百姓の風体にして、おそるべき肥桶を両肩に担った一匹のジジイではないか。

「ギャーーーッ!」 
 由希子の絶望的な悲鳴が闇夜に轟きわたる。
- teddytom -2003-01-02 13:22:19 (ホームページ)
その悲鳴に驚いたのはジジイのほうだった。
ジジイは襲ったつもりは全くなく、道を尋ねたかっただけなのだ。

自意識過剰な由希子は、
通り魔?ちかん?なんなのこのジジイ?
てなのりで、とりあえず悲鳴をあげて、とうがらしすぷれーをジジイに
かけた。

- 紗那 -2003-01-07 17:15:29
しかし、ジジイはとっさにとうがらしすぷれーをよけたが、何かにつまずき前乗りにずっこけてしまった。
それと同時にグキッ!と、にぶい音が響いた。
そのあと、少し沈黙が流れた。
次の瞬間、空間がグニャッとゆがんだ気がした。
ジジイの方を見るとジジイの首が変な方向に曲がっていたが、それでもなおジジイは由紀子の方にじわりじわりと向かってくるのだった。
そのあまりにもおぞましい光景に、由紀子は足がすくんでうごけなくなってしまった。

- teddytom -2003-01-08 00:29:30 (ホームページ)
由紀子はうごけないながらもじじいの顔を必死に見た。
もしものことがもう自分に起こっていると思ったのだ。
ダイイングメッセージのことを考えた。
しかし、気付いたのだ。
じじいの顔があのコロボックルであることに。
アイヌの伝説の妖精コロボックルであることに。
- 讃岐うどん -2004-03-31 06:05:14
その時、天空に月が姿を現わし、煌々たる光を下界に投げ掛けた。
地を覆うていた闇が払われる・・・。

運命は、未だ由希子を見離していなかった。
降り注ぐ光の粒子とともに、救いの者を差し遣わしたのだ。
- 讃岐うどん -2004-03-31 06:10:30
その者は、側面の木立の間から、雄叫びを挙げて躍り出て来た。

「しゅばっ!」

なんの意味があるのか、派手に空中二回転を決めてから、立ち竦んでいる由希子の・・・ちょうど真ん前に、ズザザッ!と着地した。

(げェッ!!!)

由希子は、心臓が口から飛び出るほど驚いた。
- 讃岐うどん -2004-03-31 06:16:42
・・・その者は、前方をかっ!と睨み据え、大仰に両手をかざして、身構えた。
にじり寄る異形の者から、由希子を守護しようとする態勢だった。

「退(しりぞ)け! 妖怪変化!」

凛とした青年の声が響いた。
武道の心得が有るのか、その構えには微塵の隙も見られなかった。
- ぺーすけ -2004-04-19 07:40:49

 だが、青年が颯爽としていられたのは、そこまでである。
 次の瞬間、無数の銃弾がその身を貫き、蜂の巣と変えてしまったからだ。

 ドガガガガガ……!
「ぐわ、どわ、げはっ!」

 なんとジジイの担う肥桶は、強力な機関銃が内臓されたハイテク兵器だった!

「おひょーーーっ!」
 闇の中、ジジイなりに気合いのこもった雄叫びが甲高く、尾を引いて轟いた。
- ぺーすけ -2004-04-19 13:36:29

 警官隊がどやどやと駆けつけてきた。
「おまえだな。罪なき人々を奈落の底に突き落とす大悪党は?」
- ぺーすけ -2004-04-19 13:37:31

 そして――。

 由希子はといえば、完全に心臓が口から飛び出てしまった。
 その両手は頑丈な手錠でしっかりと拘束されている。 
 こんな馬鹿な……。
 すでに立ちあがる気力も失せた彼女は、担架で運ばれながらの連行とあいなったが、報道陣の浴びせるストロボの閃光にもうつろな表情のまま、瞬き一つしない。

「あの娘ですよ。通る男を誰彼かまわず痴漢あつかいし、冤罪をでっちあげ、金をせびり取る男狩りの首謀者は」
- ぺーすけ -2004-04-19 13:38:27

「へええ、あんな顔してねえ」
「もともとは、レイプされた報復のため、自分が囮になって変質者をおびき寄せ、懲らしめていたらしい。それがいつのまにか、私怨と私欲を取り違え、男から金を巻き上げるのに専心するようになった」
「復讐に燃える心でも、堕落はするんですな」
「復讐しようとすることが、すでに堕落だが」
- ぺーすけ -2004-04-19 13:39:21

 最前、ジジイに射殺された若者の遺骸にはムシロがかぶせられ、検証をおこなう警官が取り巻く。
「主犯の娘とつるんで、脅迫をおこなった奴です。こいつの怪腕で、何人が葬られたことか」
「痴漢呼ばわりされ被害者が抗弁すると、正義漢づらで出てきて、脅したそうです。最後まで拒んで命を奪われた者も大勢いるらしい……」
「悪党め」
- ぺーすけ -2004-04-19 14:04:08

「しかし、銃弾で蜂の巣とは……だれに殺られたのかな?」
「こういう奴だから、敵は多い。おおかた、対抗組織の仕業でしょう」
「あの娘の話では、肥桶を担いだ百姓のジジイが現われ、天秤棒に仕込んだ機関銃を連射したという……」
「うわっはっはっはっ!!!」
 警官や報道陣の中で、真に受ける者はだれもいなかった。
- ぺーすけ -2004-04-19 19:55:11

 めでたし、めでたし。
 かくして都からは、悪がひとつ滅び去った。
 これで男が一人でも、妙な疑いをかけられず、安心して夜道を歩けるようになったのだ。

 われわれは一匹の妖怪に感謝しなければならない。
 都が悪に染まると、どこからともなく(たぶん、田舎から)やって来る。
 なりふり構わず、腐った事象を清めて帰る。

 正義を名乗らぬ正義の味方。
 勇士を気取らぬ勇士の仲間。
 頑張れ! われらのヒーロー、肥かけジジイ! 
 


( おしまい )


共作者の皆さんへ

この物語はこれで完了いたします
リレーによる執筆に協力していただいた方々、ご参加ありがとうございました


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