「風が吹く前に」


本当に素直な気持ちで幼年時代を振り返ると……。

- hide -2004-03-07 03:52:12
純文学。文章に凝らずに、素直に表現したい・・・
- あきお -2004-03-07 12:53:36

幼稚園の庭にいた頃だった。
滑り台で遊びたくて、滑る板のほうからよじ登っていくと、
天辺の溜まり場を何人かの子供が占拠しており、脅すように問いかけた。
「おまえ、タコ組だろ? タコ組の子は、あっちに行け。ここ使っちゃダメだ!」
- あきお -2004-03-07 12:54:24

その子たちは、つまらない事情からタコ組に敵対しているカバ組のメンバーだった。
いずれも四つから六つの年頃だが、行き場を失い、うろたえるこちらを、
幼児なりに険悪な形相で睨みつけている。
自分は答える代わりに、泣き出してしまった。

- あきお -2004-03-07 12:55:11

誤解のないように言っておこう。
自分はタコ組ではなく、イモ組に編入された園児だった。
だから、
「タコじゃないや、イモだい」
と答えれば、無難に済ませられたはずだ。
それなのに、大声で泣きわめいたのだ。
- あきお -2004-03-09 14:22:25

なぜなら、それはとても理不尽に思える状況だったから。
少数の者が勝手な理由から、だれもが使える場所を乗っ取って、縄張りのように牛耳り、
他の子供が利用するのに差別的な制限を課している。
たとえ自分が危害のおよぶグループに属さぬにせよ、
わがまま放題の者たちが選別的な支配権を振るう中、
遊ぶための許諾を乞わねばならぬ状況に置かれたこと自体が
幼い胸に堪えられぬまでのストレスを被らせたのである。
- あきお -2004-03-09 14:23:28

カバ組の子たちは、こちらの立場について誤った判断を下し、さかんに囃し立てた。
「タコが泣いた! タコが泣いた!」
- あきお -2004-03-09 18:04:32

ひたすら泣きじゃくる相手の反応に調子付いたカバ組のひとりが、
滑り板にしがみつくこちらの前まで出しゃばってきた。
「はい、はい! 悪いタコはここに居てはいけません」
- あきお -2004-03-09 18:08:26

このカバ組の子は、タコ組と思いこんだ相手を親切なことに、
滑り板の上から排除にかかったのだった。
「嫌われ者のタコは地獄へ落っこちましょうね」

相手は決めつける口調のまま、
かろうじてバランスを保ちながらすべり板の両縁にしがみつく、
こちらの手を無慈悲にも引き剥がそうとする。
「はい! さっさと落ちましょう」


( 続く )



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