「ブキミに便利」


「このままでは教会が潰れる。副業に便利屋を始めよう」 「あなた……そんな恐ろしいこと」

- ぺーすけ -2002-03-10 00:55:58 (ホームページ)
 鬼塚英一牧師とその妻、佳子とで切り盛りする個人教会「鬼塚チャペル」はアットホームな雰囲気のいい教会なのだが、信者たちから次々と見放されており、献金でまかなわれるはずの屋台骨はいまにも傾きかかっていた。
 まあ、無理もなかろう。
 両親がどんなに張り切ったところで、息子があのザマじゃあ、信者なんか寄り付くはずがない。
- ぺーすけ -2002-03-10 00:56:52
 鬼塚ヒデユキ。
 まだ十五歳なのに、街でひっかけた女の子を、自宅である教会の礼拝堂へ連れ込んでは押し倒すという道楽をこのうえなく好む、教会を根城とするような、とんでもない放蕩息子なのだ。
- ぺーすけ -2002-03-10 00:57:33
「ヒデユキ! おまえ、また信者の献金、くすねたわね?」
「てめえの子を疑うようになっちゃあ、母親もオシマイだよなあ、チッ、チッ」
 しかし、その疑いは長年におよぶ事実に裏付けられた正当なものでもあった。
- ぺーすけ -2002-03-10 00:58:09
「こら、ヒデユキ! 洗礼式に使うワイン飲み干して、葡萄の汁詰めたの、おまえだろ!」
「ケッ! どうせ、酒が飲めないくせによ」

- ぺーすけ -2002-03-10 00:58:57
 ヒデユキのガールフレンドの原真理――鬼塚教会の数少ない信者のひとり――が妊娠したことがバレたとき、両親は殺さんばかりの形相で息子に詰め寄った。
「絶対、産ませて育てるのよ。中絶なんか許しませんからね」
「無茶言ってくれるじゃねえか。てめえの息子の年がわかってんのかよ? まだ十五歳だぜ。彼女だって、十八になったばっかりだし。それによう、言いたかないけど、俺の子じゃないかもしれないんだぜえ」
- ぺーすけ -2002-03-10 00:59:38
「ふざけるな! おまえ以外に考えられるか!」
 ふてぶてしく居直るヒデユキの頬に、鬼塚牧師の鉄拳が見舞った。
 ビタ〜〜ン!
「チッキショウ! やりやがったなあ!」
 父と子は四つに組み合って乱闘をくりひろげ、礼拝堂は修羅場と化していく。
- ぺーすけ -2002-03-10 01:00:17
 この出来事以来、鬼塚牧師は、自分に妙な才能のあることに気付いたのだった。
 それは、息子とのケンカで破壊された自宅を修理した結果、否応なしにわかったのだが、大工としての才能である。
- ぺーすけ -2002-03-10 01:01:02
 彼は、決意したことを妻に打ち明けた。
「このままでは教会の経営が破綻する。副業に便利屋を始めよう」
「あなた……そんな恐ろしいこと」
 世間知らずの佳子夫人には、便利屋がなにをするものかわからなかった。
「どこが恐ろしいものか。われわれには、ちゃんと神様がついておられるじゃないか」
 しかし、鬼塚氏にもやはり、この副業がどういう結果をもたらすことになるか、よくわかっていなかったのである。
 それは、鬼塚一家が、真に恐ろしい世界へと足を踏み入れるきっかけとなる選択だったのだ。   
- ななしのはなし -2002-03-11 14:45:43
「便利屋をやるには、宣伝をしなくては・・・」牧師がつぶやいた。
「宣伝って何をなさるの?」佳子夫人が尋ねた。
「それはだな・・・。」牧師は物静かに語りだした。
- ぺーすけ -2002-03-22 11:32:19
 もっとも、宣伝する必要もなかった。
 鬼塚教会のことは、ヒデユキの評判を通してあまりにも多くの人々に知れ渡っていたからだ。
「バカ息子のいる教会のオヤジが便利屋をはじめたぞ」
 鬼塚英一の新しい試みは、たちまち町中に伝えられていくのである。
- ぺーすけ -2002-04-01 08:20:50
 さっそく、仕事が舞い込んできた。
 宗教家にふさわしい仕事であった。
「娘が悪魔にとり憑かれたようだ。お祓いをしてもらいたい」

- ぺーすけ -2002-04-02 12:43:57
 鬼塚英一は硬直した。
 妻佳子も同様だった。
 こんな依頼がくるとは思いもしなかった。
- ななしのはなし -2002-04-02 14:41:22
鬼塚英一は、ふと考えた。
「本当に悪魔憑きなんだろうか?それともからかわれているのだろうか?でも、でも、お金が必要だぁぁあああ」
悩んだあげく、その少女の処へ妻佳子と向かう事になった。
その少女の家に辿り着いたら、そこは・・
- ぺーすけ -2002-04-03 20:00:29
 家ではなかった。
 死体置き場であった。
 少女は遺体となって、その中に安置されているという。
「ぐわっ!」
- ぺーすけ -2002-04-03 20:32:05

 鬼塚英一は、家主にたずねた。
「お嬢さんは亡くなられています。いったい、どうしたというのですか?」
「夜な夜な、起き上がると、街に出て、人を襲うのでございます」
「まあ、恐ろしい」
 佳子が、おののいた。
- ななしのはなし -2002-04-05 14:33:34
家主は、続きを語り始めた。
「そして、襲った人間をここに持ち帰ってくるのです。」
そして奥の扉を開けた。そこには、たくさんの死体が横たわっていた。
だが、不思議とそれらはすべて腐敗していなかった。
- ぺーすけ -2002-04-05 20:50:23
 家主はさらに語り続ける。
「これらの死体も夜には、娘とともに起き上がり、人を襲いに行くのでございます」
 このままでは、犠牲者は増え続け、町中の者がゾンビと化してしまうであろう。
- ななしのはなし -2002-04-10 15:05:40
佳子がつぶやいた。「ゾンビって死なないのよね。じゃあ葬儀屋さんも教会も破産しちゃうわ。私達、便利屋が本業になるのね・・・」
家主が叫んだ「今はそんな心配をしてる場合じゃない!!後数時間でこいつらがまた起きて人を襲いに行ってしまう!!」
その時、鬼塚が家主に問いかけた。「なぜあなたは襲われないのですか?」
- -2002-04-12 12:44:37
そういえばそうだ。
なぜ、襲ってこないのだろうか?

『・・・・・・』

考えた末。牧師は叫んだ。

「紙のご加護だ!!!」

そうして牧師は、ゾンビへと立ち向かったのであった。

- -2002-04-16 22:38:59
と、言ってもどうすればいいのか。

胸から下げている十字架を握り締めると、鬼塚は横たわるゾンビの周りをゆっくりと歩いてみた。
目の前の死体もその隣も、特に変わった様子はない。一様に足の裏が汚れているのは、家主の言葉が嘘ではないという事だ。
「ねえ、どうして皆、きちんと並んで寝ているのかしら?」
佳子が首を傾けながら言った。



- ぺーすけ -2003-02-11 08:56:23
「どうしてだろうね? ふっふっふ……」
 いつの間に来ていたのだろう、鬼塚夫妻の背後にたたずんだ家主が奇怪に忍び笑いをもらす。


( 続く )





( 続く )



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