「走れ、バッカロー!」


少女はみんなから「バカ」と呼ばれていた。 理由は、本当にバカだったからである。

- ぺーすけ -2002-04-02 14:14:48 (ホームページ)

「ハア、ハア、ハア……あたし……もう、ダメ」
 汗ばんだ頬を紅潮させた少女の、豊かな乳房が波打つように揺れ、発育したお尻がぷるぷると震える。
 背後から少女を励ますように、男が気張った声で言い聞かせる。
「もう少しだ。ここで果てたらいかんぞ!」

 早朝の住宅街であった。
 ブルマーの体操着に身を包んだ娘がよろめきながら、道を駆けていく。
 肉付きのよすぎる身から脂肪を減らそうと、ジョギングに挑んでいるところだ。
「ゼエハ、ゼエハ……もうダメ……あたし、走れない」
 自転車で追いかけながら、叱咤するのは彼女の兄。
「バカ、頑張るんだ」

 バカは頑張った。
- ぺーすけ -2002-04-03 19:19:04

 少女はみんなから「バカ」と呼ばれていた。
 理由は、本当にバカだったからである。
- ぺーすけ -2003-02-25 16:00:30

 と。
 突如、少女の前に大きな動物が現われた。
 馬である。
 どんな成り行きなのだろう、横丁から飛び出してきたのだった。
 少女とぶつかりそうになり驚いた馬は、後ろ足で棒立ちになると、
強力な蹄で、前途を妨げる者の頭をまともに蹴りつけた。

 バカッ!

 バカは、いや少女は、みごとにひっくり返った。
- ぺーすけ -2003-02-25 16:08:18

「ああっ!」
 後ろを走っていた兄の叫びと、自転車の急停止する摩擦が、同時に早朝のしじまを破る。
 本来、目前の脅威である四つ足の動物に対すべきところだが、
この兄は、妹への介抱という向きに対応を切り替え、急場を誤魔化そうとした。
 すぐ逃げられるようにだろう、自転車から降りぬまま、足元でのびている妹を気遣って、呼びかける。
「大丈夫か? バカ、大丈夫か?」
- ぺーすけ -2003-02-25 20:01:32

 バカはうめくように、かぼそい声で応じた。
「う〜ん……大丈夫……じゃない……」
「そうか。安心しろ、助けを呼んできてやる」
 兄は、自転車の向きを馬とは反対に転じると、
身動きしない妹をその場に置いたまま、一目散に逃げ去った。
 少女のおぼろげな意識の中で、
キュオンキュオンキュオンと猛速度でペダルを漕ぎまくる音が遠ざかっていく。

- Kagami -2004-06-03 18:47:10
 少女はバカなので、兄が助けを呼んできてくれるものと信じ、すっかり安心しきって暗い闇の淵に落ちた。気を失った。
 兄はもちろん、助けに来ない。体裁だけは好青年で正義感の強い、優しい兄を装っているが、内面は世間の目に怯え、他人から嫌われるのを恐れるあまりに化けの皮を被っている男だった。
 少女はバカなので、そんなことも当然、知らない。


( 続く )



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