「風雲バビロン健児」


「これから、バカモノどもを退治に行ってまいります」 「あまり根を詰めて戦うんじゃないよ」

- ぺーすけ -2002-03-07 20:17:32 (ホームページ)
第一話 バカモノ退治の巻

「お父さん、お母さん。これから町まで、バカモノどもを退治に行ってまいります」
「あまり根を詰めて戦うんじゃないよ」
 健児を見送りながら、ため息をもらす両親。
「悪い子じゃないんだけどねえ……」
- ぺーすけ -2002-04-01 08:16:55
 さて。
 町へと出向いた健児はさっそく、ひとりのバカモノを見つけた。
「ああっ、バカモノだ!」
- ぺーすけ -2002-04-01 19:33:46
 ヤクザっぽい男が、人前であるのを気にする様子もなく、
否むしろ通行者に自分のものを見せつけるかのように、
往来でジョロジョロと立小便をしていたのである。
 決然とした足取りで歩み寄ると、男を背後からどやしつける健児。
「このバカモノめ!」
 男は、小便をした格好のまま、ビクついて飛びあがった。
「げげっ! なにさらすんじゃ、このガキゃあ!」
「きさまこそ、下劣なものをさらすな!」
- ぺーすけ -2002-04-30 23:29:03
ヤクザな男と健児とは、取っ組み合いのケンカをはじめた。
周囲に寄ってたかり、面白がる野次馬たち。
- じゃじゃじゃこ -2002-05-18 18:50:07
数分後、警察官が2人現れた。
非常に強そうな警察官だ…。
しかし、どこかで目にした事のある顔だ。
「んっ?」
ヤクザな男も同じ事をおもったらしく顔を覗きこんだのだが、その瞬間、さっきまで威勢のよかった男の顔がみるみると青ざめていくのを健児は見逃さなかった。そして男の体は10メートル程吹っ飛んだのだ。
「私らのいる前で喧嘩するとは上等じゃのう、ワレ」。
すさまじい程のドスの効いた声。
なんと、その警察官2人組の正体は
「ナニワの女番長」こと和田アキ子(アキオ?)&
「Mr.女子プロレス」こと神取忍の2人だったのだ。
- 試験送信 -2002-11-16 00:08:18
「フウ・・・! とんだ手間を取らされたモノだ」
健児が警察の取調べから解放されたのは、夕刻のことだった。
早くも宵闇が街を覆わんとしている。
普段なら“バカモノ退治”を切上げて帰路に着く時間だが、今日はまだ一人しかやっつけていない。
「気を取り直して、バカモノ退治を続けねば・・・!」
健児は両肩を怒らすと、雑踏の中へ歩を進めて行った。
- ぺーすけ -2002-12-25 16:48:21
すると、健児の制裁を待ち受けていたかのように、あらたなバカモノが彼の前途に現われたのである。
- じゃじゃじゃこ -2003-01-09 10:56:10
そいつは「あっほ!」と叫びながら現れた。
顔が鈴木○男にそっくりな小柄な男は
笑顔で健児に近づいてきた。
健児は
「こいつはバカモノではなくてアホモノだな。
 俺はバカモノ退治をしているから無視だな。」
とボソっと呟き、その場を後にしようとした。

- 讃岐うどん -2003-03-14 05:47:19
その時だった。
男は突然、両手で腹部を押さえ、猛烈にもがき苦しみだしたのだった。
「うッ! ううう・・・。うッ、うッ! う〜ッ! うう〜〜ッ!! ううう〜〜〜ッ!!!」
「オイ、どうしたッ!?」
すわ!と駆け寄る健児だが、男はいっそう呻き声を高めて、路上をのたうち回るだけだった。
- ぺーすけ -2003-03-16 08:42:27

 取り巻いて、好奇の目で眺める野次馬ども。
「もがいてる、もがいてる」「死んじゃうのかな?」「カメラ出せよ、カメラ」

 なす術もなく見守る健児だが、野次馬どもの面白半分な騒ぎように腹が立ってきた。
「バカモノども! この男の苦しみがわからないのか?」

 そんな健児の憤慨ぶりを嘲笑う野次馬ども。
「わからんわい」「おまえが介抱してやりゃいいだろ」「同情するなら、医者を呼べ」

 だが健児にも、足元でもがき苦しむ男になにもしてやることができない。
 急病人への応急処置のやり方など知らなかったからだ。
 早く! 医者はまだか、医者は?
 
- ぺーすけ -2003-03-16 08:44:11

 そうこうするうちに、男は死んでしまった。
 救急車はついに来なかった。
 携帯電話を持ち歩く者は多いのに、だれも呼ばなかったのだろう。

「へへへ……金目のもの、あるかな?」
 野次馬のひとりが、死ぬのを待ち受けていたように近寄ると、
骸と化した男の懐を探り、財布をくすねようとする。

「あっ、ああっ……このバカモノ!」
 健児の怒りが爆発した。
- ぺーすけ -2003-03-16 23:38:58

 だが、相手は悪びれるどころではない。健児に向かって言い返してきたのだった。
「てめえのほうがバカモノじゃねえかよ」

- 讃岐うどん -2003-03-27 23:27:48
「死んだ者にゼゼコが要るかッてんだィ! こらァ立派なリサイクルだぜ。」
「ええい、詭弁を弄すナ!」
健児は、両の拳を震わせながら叫んだ。
「貴様の所業は、屍肉を漁るハイエナと何ら変わらん! 人間の誇りをドコに捨てたのだ?」
次の瞬間、野次馬どもの間から、ドワハハハハハ!!!と大爆笑が沸き起こった。
「ニ、ニンゲンのホコリだ〜?」
「コイツ、マジでイッチャッてるゾ!」
「医者呼んでやろうぜ、脳病院から〜♪」
「わ、笑い過ぎて・・・腹がイタイ!!」

・・・健児の生きているコノ時代。
人の心は荒廃しきっていた。
- オムレタス -2003-04-11 23:20:41
“健児の生きている時代” の完全失業率22.5%。
収入の道を閉ざされた1,500万 (!) の人々が、 巷に溢れている。
公的年金も各種社会保障制度も、 とうに破綻してしまっていた。
“国民総中流社会” などは、 遠い過去の夢物語でしかない。

社会不安が増大の一途をたどる中・・・。
福祉 ・ 厚生の理念は後退し、 凋落の危機感に慄く有産層 ・ 中間所得層の間では、 社会的弱者を切捨てようとする動きが公然化し始める。
「救命ボートは、 もう満席だ!」
「貧乏人は早く死ね!」
と云った非人間的なスローガンが声高に叫ばれる、 歪んだ時代の到来を見たのである。

“ネオ ・ ファシズム” の台頭・・・。

それは、 人々の心に砂漠が押し寄せるのと、 将に時機を同じくしてめぐる現象であった。
- オムレタス -2003-05-15 00:24:46
閑話休題・・・。

時の間に、 街路は騒然とした空気に包まれた。
全身から怒気を迸らせた健児が、 ハイエナ男を締め上げた途端、 一見して無頼漢と知れる連中が、 野次馬どもを蹴散らしながら、 躍り出て来たのである。
ざっと十人はいる。
「若いノ! 俺らのシマで舐めた真似してくれるじゃねェか?」
健児は、 ハイエナ男を放り捨てると、 憤怒の形相で無頼漢達の方へ向き直った。
「現われたな、 バカモノども!」

遂に、 壮絶なるストリート ・ ファイトの幕が上がった。
争闘となると、 健児は水を得た魚の様に、 其の本領を発揮する。
悶え苦しむ男を眼前にしながら、 何事も為し得なかった今し方の健児とは、 別人の感があった。
「今まで、 弱い者達を散々泣かせて来たのだろうが? 破邪顕正の鉄拳を受けて見よ!」
“悪” に容赦は要らない。
健児の剛腕が唸りを上げる度に、 無頼漢達は一人また一人と薙ぎ倒された。
路面が、 無様な呻声を挙げる負傷者で覆われるのに、 然したる時間は掛らなかった。

健児は、 もはや手の付けられない “人間活火山” と化していたのである。
- オムレタス -2003-05-15 00:25:58
健児の圧倒的な強さを目の当たりにした野次馬達の間に、 時間差を置いて興奮の波が伝播して行ったと思うと、 やがて・・・健児へ惜しみない声援が送られ始めた。
利害や打算からではなく、 自分の正しいと信じる道を貫く為、 身命を抛って戦う人間を、 未だ見た事が無かったのである。

スクレーピーの様に増殖する “電脳ファシズム” は、 メディアの創造性を奪い、 人々の精神の自由を侵蝕し続けていた。

電脳ファシズムの呪縛下の日本・・・。

世論は、 放送作家 ・ 構成作家の台本の中に在る。
もはや “メディア” は、 恣意的に世論を操作し、 虚偽の世論を演出して見せる、 俗悪な装置でしかない。

主体的な意志も思考も、 批判精神も喪失していた人々の眼には、 全身から闘気を漲らせて立つ健児は、 それだけで驚異的存在と映ったので有る。
“狂気” の閃光は、 往々にしてカリスマ性と同化する。

「人間の、 人間による、 人間解放の闘い・・・か」
独語したのは、 野次馬達から離れた場所に立って、 最前からの事態の推移をさも興味深気に見守っていた人物であった。
「漸く・・・伝説の英雄 “プレスター ・ ジョン” が、 この国に現われたか」
- オムレタス -2003-05-19 21:26:48
「さア、 残ったのは貴様一人だゾ!」
健児は、 蒼白な表情で立ち竦んでいる首領格の男を睨み据えた。

「うわわ! ま、 待て、 待てよ、 待ってくれ〜!」
首領格の男は狼狽すると、 卑屈さを露わにしながら懇願した。
「話し合おうじゃねえか? 平和的に行こうぜ、 な、 な!」
「駄目だ。 貴様も男なら最後まで闘え! 散華した手下どもに示しが付くまい?」
健児は、 山の様な威圧感を放ちながら、 ずい!と一歩進み出た。

男は悲鳴を挙げた。
「勝負ならもう着いてるって! このシマは、 今日からアンタのモンだぜ。 俺たちゃ二度と寄り付かねえよ〜!」
「バカモノ! 天下の往来は、 すべての人達の物だ。 個の所有に帰する様な事が有ってはならんのだ!」
健児は、 さらに一歩進み出た。

「こんな自明の道理もわからぬ貴様の事だ。 見逃したら、 また弱い者虐めをやらかすに決まっている。 この場で成敗してくれるから、 健児の鉄拳・・・得度済ませて受けるがいい!」

夜の街路に、 男の断末魔の悲鳴が轟いた。
- オムレタス -2003-05-19 22:35:51
突然、 落雷に打たれたかの様な、 凄まじい叫び声が挙がったので、 人々はぎょっ!として其の方向を振返った。

「オ〜! オオ〜〜!! アラカツマ様じゃ、 アラカツマ様じゃゾ!」

一人で喚 (おめ) き騒いでいるのは、 宝籤販売の老婆であった。

「とうとう・・・アラカツマ様が御降臨なされたのじゃ〜!」

時々、 憑依状態に陥っては有らぬ事を口走るので、 この界隈では “名物婆さん” として知られている。
今宵も、 其の発作が起きたのである。

「見よ、 見よ〜! あれなるアラカツマ様の御姿を・・・。 非道なる悪者輩を打ち懲らしめて、 人の世に正義在るを御示しに来られたのじゃ〜〜!!」

老婆が指し示す先に立っているのは、 無論・・・健児であった。
- オムレタス -2003-05-24 07:20:51
「御婆さん、 生憎だが人違いをしている。 俺の名は健児と云うんだ。 “荒勝馬” じゃあない」
健児は、 懸命に老婆を宥めながら、 そろそろ引き上げ時だと感じていた。

(バカモノ退治は終わった。 月見うどんでも、 たらふく食って帰るとするか。 ・・・いや、 待てよ)
あと一つ、 今夜の中に仕遂げねばならぬ事が有る。

目の前で悶絶して果てた、 例の小柄な男・・・。
野晒しにされた儘の其の遺体を見下ろしながら、 健児は思った。

(この不幸な男にも、 帰宅を待ち侘びる家族がいる事だろう。 亡骸を送り届けてやらねば・・・)
- オムレタス -2003-05-24 10:57:04
「畜生ッ! 何で俺がこんな目に遭わなきゃなんねえんだよ?」
小男の亡骸を背負わされて毒付いているのは、 あのハイエナ男であった。

「文句を云うな! 罪滅ぼしの機会を与えてやったんだゾ、 成敗されたくなかったら、 しっかり歩かんか?」
「・・・ッたく! 今夜は、 とことんツイてねえや!」

胸ポケットの名刺から、 男の住所は掴めた。

(夜を徹して歩こうとも、 家族の元へ送り届けるのだ)

健児は、 ハイエナ男を引率しながら立ち去って行った。

               ◇               ◇

「あの若者の後を尾けるんだ。 気取られるなよ」
野次馬達から離れた場所に立って、 事態の推移を見守っていた人物は、 傍らの配下らしき者に目配せをした。

「時機を見てコンタクトを取る。 果たして、 あの若者・・・我々の待ち望んでいるプレスター ・ ジョンなのかどうか、 直接話し合って確かめたい・・・」


- オムレタス -2004-02-21 14:45:02
主人公プロフィール v(^.^)


【大伴 健児 (おおとも けんじ) 】

財政の破綻した近未来の日本・・・。
市井に蔓延る悪を根絶せんと、 徒手空拳の闘いを挑み続ける “怪男児” 。
北米熊並みの怪力と、 豹の様な敏捷性を併せ持つ。

好物は、 月見うどん。
平素は温厚だが、 一度激怒すると手が付けられない。
悪人どもの頭上に、 容赦のない鉄拳を炸裂させまくる。

時局に阿らず、 トレンドの変遷も意に介さず、 独自の正義を貫かんとする健児の姿は、 何時しかカリスマ性を帯び始め、 《 “救世主的英雄” の出現!》 と各方面から誤解を受ける羽目に・・・。
- オムレタス -2004-02-21 14:55:04
第二話 神兵降臨の巻 v(^.^)

「御父さん、 御母さん。 今日も町まで、 バカモノ共を退治に行って参ります」
「もう、 一週間連続になるよ。 少しは身体を休めたら如何だい?」
「いいえ、 世に害を成すバカモノ共の絶え果てるまで、 健児に安息の日は有りません!」

健児の昂然とした表情に、 迷いなど微塵も感じられない。

「懲らしても、 懲らしても、 バカモノ共の跳梁は、 一向に止みません。 こうしている間にも、 勢いを増している事でしょう。 健児は行かねばなりません。 ・・・供の者も、 表に控えて居ります」
「ああ・・・。 灰江田さんの事だね?」
- オムレタス -2004-02-21 14:57:34
「それじゃ、 御弁当を持って御行き。 どうせ必要になると思ったから、 用意して置いたよ。 灰江田さんにも分けて上げるんだよ」

母親が差し出したのは、 特大の柳行李であった。
蓋を開けると、 フットボール ・ サイズの握り飯が三個並んでいる。

「是は、 実に美味そうだ! 百万の味方を得た心地がします。 灰江田の奴も、 さぞや喜ぶ事でしょう」

優に五人前を平らげる健児のために、 米の買い置きは絶やせない。
健児の胃袋を賄う母親の苦労も、 並大抵ではなかった。

「それでは、 行って参ります!」

ハイエナ男を従えて・・・勇躍、 町へ赴く健児の後姿を見送りながら、 両親は又も嘆息した。

「身体だけは、 あんな丈夫に育ってくれたんだもの。 神様に感謝しなけりゃいけないんだろうね・・・」

空は、 何処までも青く澄み渡っていた。


( 続く )



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